鶏たちは想像以上にたくさんのことを考えています。
私どもは鶏とともに多くの時間を過ごしてきましたが、鶏についてはっきりとわかっていることは、
顔や声を見分け認識していること。
感情豊かで20種類以上の声で表現し、仲間とコミュニケーションもとっていること。
コミュニティを形成する社会性の生物であること。
環境などで彼らの中の何かが狂ってしまうことがあること。
今日はその最後、カンニバリズム(悪癖)について、お伝えしたいのです。
じつは冬場の豪雪に備えて、新潟の十日町から直線距離で126.45Km、雪のない群馬県邑楽郡に移動した後に発生したカンニバリズムを事例として紹介したいと思います。
カンニバリズムとは、鶏のグループの中の一羽が、いわゆる尻つつき、腸抜き、食血、羽食いなどの行動を起こし始めることで、それがそのグループで拡まってしまって習慣性のあるものになる大変厄介なものです。
1羽が別の鶏をつつき始め、出血すると別の鶏もそれをつつき始めて、被害鶏は集団リンチを受ける形で失血、あるいは腸を食べられてしまって死に至ります。
原因はわかっていませんが、季節の変わり目、飼料の変化など、環境が変化するタイミングに発生することが多いと言われています。
これはおそらく産卵中に突かれた状態。
幸いこの2羽は、つつきを覚えてしまった鶏から隔離保護して助けることができましたが、集団リンチに加わって「つつき」を覚えてしまった鶏が同じ行動を起こしてしまって、多数飼いの状態によっては、それが習慣性のあるものとなって全滅してしまうこともあるそうです。
私どものこの事例の際は、大きい目の鶏種で丈夫に育っているから移動しても大丈夫だろうと判断し移動したわけですが、同じタイミングで移動したほかの鶏種には見られなかったことから、鶏種や羽数によっても違いがあると考えられます。
もうひとつ、よくあるのは食卵というものがあります。
産んだ卵を鶏自身が食べてしまうということですが、もちろん“悪癖”と呼ばれているものの中で、これについては鶏が死んでしまうことはありません。
いかにそれを食い止めるかということになりますが、料理で使用した卵の殻の中に練り辛子を詰め込んで卵の形にして産卵場所に置いておくという単純な対処が、予想以上に有効だそうです。
いずれにせよ鶏の「悪癖」の原因が、飼養管理の仕方にあるのは間違いないと思います。
何が足りないのか、どこにストレスがあるのか。経験を積み重ねてよく観察することが大事で、鶏が感じている小さなストレスに気づいてあげられるかどうか、ということでしょうね。
さて、痛々しい写真と少し重い話題となってしまいましたので、次回は明るいお話にしたいと思います。