何かに取り憑かれたように野生の宝庫に山籠りをして、動物がどうやって鶏を襲うのかを見ることから始めました。
あれから10年。まさか獣害対策と素材の研究が、移動式鶏舎(チキントラクター)という形で全国にお届けさせていただいていることも、最初は販売することも想像できないぐらい派手な獣害にショックを受けてばかりだったんです。
自然界ってどんなものなんだろう。生態系ってどういうことなんだろう。
同じ地球の上に自分らも生きていて、それらをどう見るべきなんだろう。
大工の家の出で、幼い時からものづくりが得意で、自然とここまできたけれど、ここから先はどんな技術よりも知っておく必要なものがあると感じていました。
ほんとに動物たちに突破されないニワトリ小屋を築くことができるものか。
とんでもない巨木を刻んで木造建築を築き上げたり、築200年の古民家の高気密化や断熱化を施行してきた自分。動植物に無害な木材の防腐処理を考えてきた自分。数十トンもある巨石を刻んだ彫刻やモニュメントを設置してきた自分。純度99.99%のタングステンなどレアメタルの加工で1000分の1の寸法を狙う製造技術を研究していた自分。自然や動物が好きな自分。。。
その自分にしかできないものがあるとしたら、これしかなかったのかもしれないなぁと思っています。
そもそも今みたいに鶏が好きで始めたわけではなくて、生態系や自然科学の素晴らしさの中で描いた相関図だけを見ていたんですよね。
最近よく耳にするSDGsということになるんでしょうけど、それこそが今の時代に求められる考え方だと思っていたわけです。
今年も山の先っちょから白くなってきました。なんとかぎりぎりまで仕事をさせていただいて、ほんとに感謝しております。