私たちはチキントラクターを作るのに国産の杉を使っています。
くどいようですが、軽いのはいいけど水湿に弱く腐りやすい杉の木にACQという動植物に無害の防腐処理を特別な方法で施しています。
杉を使う理由は、軽さももちろんその柔軟な特性や断熱性など、ほかの素材にない優れた性質をもっているからなんです。
そして日本の森林資源を活用することは山の活性化にもつながると考えています。
ただ、いくら性質が優れていて防腐処理をしていても作りが良くないと長持ちはしません。
高温多湿の気候の中で、夏の猛暑や冬の寒さに耐え大切な鶏を守ってくれるものとするには、それを活かす工夫が必要になります。
木が材となってからも呼吸をするというのを聞かれたことはあるでしょうか?
呼吸をするって生きてるの?なんて、思われるかもしれませんが、とくに杉の木は湿度の高い時は湿気を吸い、乾燥してくるとそれを吐き出すことで屋内の環境を整えます。
調湿性という言い方をしますが、乾きすぎずじめじめしすぎずと言いましょうか、お肌に敏感な女性の方なら、ほどよい空気を作り出してくれる味方となるわけです。
もちろん鶏の飼養環境にも同じことが言えます。
森林浴のような心地よさが私たちのチキオントラクターの一番の特徴です。
さて、この杉の板。
中でも屋根は、夏の強烈な日差しを直接受けます。
(この時の表と裏の温度については先日、こちらで書かせていただきました。)
今回は、その屋根が夏の炎天下でどういう変化をするのかをお話ししたいのです。
屋根を作ってる途中の写真です。
よぉ〜く見ていただくと、並べられた板は少し隙間をあけて片方だけビス留め固定しているのがお分かりでしょうか?
仕上がりはその上に細い角材を固定してこのようになります。
お気づきかもしれませんが、先ほどの隙間は「杉板の呼吸」用の隙間で、湿気を吸って膨らんだ(幅が広くなった)時のためのクリアランスで、そのために片方だけを固定しています。
ちなみに湿気を吸って膨らんだ時と、反対に乾燥して縮んだ時の差は、この板で7〜8mm。鉛筆1本分ぐらい広がったり縮んだりを一年中繰り返しているということになります。
それと同時に木表(きおもて・年輪の外側)に向かって反りますが、最後に取り付けた木がガイドとなりながらそれを抑えるという役割を果たすわけです。
これを無視して施工してしまうとどうなるか。
両橋を固定してしまうと板の真ん中(木の中心に近いところ)で割れが生じます。先ほどと逆に考えると、乾燥した時期に鉛筆1本分の割れが肝心なところに入ってしまうわけですね。
私たちのチキントラクターには、このような“木づかい(気遣い)”を至るところに取り入れ、設計(標準仕様化)しています。
安いものでもありませんし、驚くほど長期間、安心して使っていただきたいという思いもあります。
有難いことに全国各地に450を超えるユーザーがいらっしゃいますが、このようなほかに譲れない取り組みは、今後も変わることはありません。